「RUM」とは何か?
国内大手EC事業者も採用するWebパフォーマンス分析手法


下記は「ビシネスIT+」にて取材をうけたインタビュー記事となります(2016年1月掲載)


表示速度の遅いWebサイトは、優れた顧客体験を提供することはできない。いまや、「サイトパフォーマンス分析(最適化)」はサイト内のユーザーの行動を分析する「アクセス解析」と同じくらい重要だ。パフォーマンス計測の新機軸として注目されている手法が、「リアルユーザーモニタリング(RUM)」である。米国では、パフォーマンス分析の新たな手法の導入が進んでいるが、国内でも、大手EC事業者がこれを採用している。

UX向上、競合優位性を確保するサイトパフォーマンス改善手法とは?

「サイトパフォーマンス」のKPIを設定する米国企業が増加

Webサイトのパフォーマンスに不満を感じた79%のユーザーは、二度とそのWebサイトで買い物をしない――。これは、米国のマーケティングコンサルタント企業、Aberdeen Groupが実施した調査結果だ。同調査では、他にもWebサイトの表示速度が1秒遅くなるごとに、「ページビューが11%低下」「CV率が7%低下」「顧客満足度が16%低下」すると発表しており、表示速度の遅いサイトには、大きな機会損失を産む可能性があるといえる。

Webサイトのパフォーマンスが消費者に与える影響は大きい

Webサイトのパフォーマンスが消費者に与える影響は大きい

ユーザーとの主要なタッチポイントとして、Webサイトはユーザー体験(UX)全体における重要な役割を担う。こうした状況について、企業のクラウド活用のコンサルティングや各種ソリューション提供を手がける、バーチャルコミュニケーションズ 技術開発部 シニアマネージャー/コンサルタントの小泉 敦良氏は次のように語る。

バーチャルコミュニケーションズ 技術開発部 シニアマネージャー/コンサルタント 小泉 敦良氏

バーチャルコミュニケーションズ 技術開発部
シニアマネージャー/コンサルタント 小泉 敦良氏

「米国企業では、サイトパフォーマンスをKPIに設定する企業が増えており、日本企業でもこの流れに追随すると予想されます。一方で、いわゆる通常のアクセス解析ツールでは、ユーザーがどこからサイトに流入して、サイト内でどのような行動をしたか、ユーザーの行動を分析することはできますが、各ページがどの程度の表示速度だったかを可視化することはできません」(小泉氏)

サイトのコンテンツには、自社コンテンツのほかに、SNSボタン、広告タグ、アクセス解析タグといった「サードパーティコンテンツ』がある。小泉氏は「場合によってはコンテンツの50%以上がサードパーティコンテンツともいわれ、自社でコントロールできない要因によってページのパフォーマンスが落ちる可能性もあります」と指摘する。

また、デバイスの多様化にも目を配る必要がある。Androidスマホだけで18000種類以上のデバイスがあるといわれ、OS、デバイス、ネットワーク環境の異なるユーザーに、サイトがきちんと早く表示されているかを確認する必要がある。

「サイトのスマホ最適化に対応する企業が増えていますが、見た目やデザインだけでなく、パフォーマンスも確認、検証していくことが重要です。パフォーマンス改善のためには、常に変動するコンテンツや多様化するデバイスごとのパフォーマンスを可視化する、ピーク時だけでなく平時のパフォーマンスを把握する、実際にユーザーが見て早いかどうかを確認する、という3点を押さえる必要があるでしょう」(小泉氏)

パフォーマンス分析手法「リアルユーザーモニタリング(RUM)」とは

パフォーマンス分析の手法は大きく2種類

サイトパフォーマンス可視化のためには、パフォーマンス計測ツールを利用することが一般的だ。この計測ツール(手法)には、2種類の手法が存在する。

「一つは『シンセティックモニタリング』と呼ばれる従来型の手法です。オンラインで利用するツールは、Webサイト上で、計測対象のサイトURL、どの国の監視サーバーを利用するか、計測頻度などを設定して利用します」(小泉氏)

パフォーマンス計測手法は「Synthetic Monitoring(シンセティックモニタリング)」と「RUM(Real User Monitoring:リアルユーザーモニタリング)」の2種類がある

パフォーマンス計測手法は「Synthetic Monitoring(シンセティックモニタリング)」と「RUM(Real User Monitoring:リアルユーザーモニタリング)」の2種類がある

シンセティックモニタリングとは、監視サーバーから、Webブラウザを自動操作し、対象サイトの全てのトランザクションを分析し、どこにパフォーマンスの鍵が隠れているかを可視化する手法だ。

シンセティックモニタリングの中には、オンライン上(Webアプリ)でサービスが提供されているものがあり、ユーザーは、ブラウザの画面上で設定をすれば計測対象のサイトパフォーマンスを監視することができる。

たとえば、計測対象が日本のサイトで、日本からのアクセスが大半を占める場合は、日本の監視サーバーを利用するよう設定する。すると、監視サーバーを通じて、対象サイトのページに含まれるファイルのダンロード秒数を定常的に計測してくれる。

「シンセティックモニタリングの利点は、詳細なデータが計測可能な点です。これにより、パフォーマンスを阻害する要因を深掘りして分析することが可能です。また、競合サイトの計測も可能です。一方、デメリットとしては、擬似的にアクセスするため、時間、場所、デバイス、ブラウザなどの環境が限定される点や、計測サンプリング数が少なく、時間あたりのPV数などが計測できない点です」(小泉氏)

もう一つが、パフォーマンス計測の新機軸として注目される「リアルユーザーモニタリング(RUM)」という手法だ。これは、対象サイトの全ページに計測タグを埋め込むものだ。

ツールの利用イメージは、Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールをイメージしてもらいたい。JavaScriptの計測用タグが設置されたページを実際に閲覧したユーザーのパフォーマンスが計測、集計されるため、シンセティックモニタリングように、ツールによる疑似アクセスではなく、実際にページを閲覧したすべてのユーザーのすべてのアクセスに基づく、リアルなユーザー体験が把握可能な点が特徴だ。

RUMの仕組み

RUMの仕組み

「全ユーザーの全アクセスについて、時間、場所、デバイス、ブラウザなどのユーザー環境が計測できるほか、PV数あたりのパフォーマンスデータが把握できるため、ピーク時のパフォーマンスも計測できる点がメリットです。一方、デメリットは、計測用のタグを設置できないサイトはパフォーマンス分析を行えないため、競合サイトのパフォーマンスが把握できない点です」(小泉氏)

このように、2つの手法の長所、短所を踏まえながら、両者を効果的に組み合わせ、問題点の可視化と改善のサイクルを継続的に回していくのが効果的だ。

パフォーマンスを重視する国内サイトでも活用される分析ツール

では、それぞれの手法に対応したツールにはどのようなものがあるだろうか。まず、シンセティックモニタリングの代表的なツールが「SpeedCurve」だ。これは、さまざまなメニューでパフォーマンスを可視化できる。たとえば、「Waterfall」というメニューは、ページが取得するコンテンツのリクエスト時間をファイル単位で計測が可能だ。これにより、リクエストのタイミングが適切かどうか、サードパーティコンテンツのトータルタイム、リクエスト、サイズなどが把握できる。

また、アクセスしてから0.5秒ごとに、サイトがブラウザ上でどう表示されているかを映画のコマのよう連続表示する「Filmstrip」というメニューもある。そして、「Benchmark」は、競合サイトのパフォーマンスを比較分析することが可能だ。今のところ、英語のみのサービスだが、多彩なレポート機能が備わっている点が特徴だ。

一方、RUMの代表的なツールは、「SOASTA mPulse」である。これは、Webサイトの実ユーザーのUX、パフォーマンスを把握できるのが特徴だ。また、ページグループやユーザー環境なども計測可能なため、ボトルネックの特定が容易という特徴もある。

SOASTA mPulseのメリット

SOASTA mPulseのメリット

「ダッシュボードには、サーバーやネットワークなどのバックエンド、JavaScriptなどのフロントエンド、両者の合計であるページロードが表示されます。ここには地域やページ、OS、ブラウザごとのパフォーマンス情報が可視化されるほか、PV数や直帰率、コンバージョン率など、ビジネス指標とパフォーマンスの相関関係も分析可能です。原因を分析し、KPIを設定してパフォーマンス改善につなげる使い方が可能です」(小泉氏)

SOASTA mPulseは、サービスラインアップが月間500万PVから設定されている。また、メニューも日本語対応しており、ECサイトやニュースメディアなどをはじめ、パフォーマンスを重視する企業の導入実績が多い。

シンセティックモニタリングとRUMの効果的な導入は、まず、RUMにより全体像を把握し、どこに問題点があるかボトルネックを見つけた上で、シンセティックモニタリングで問題点を深掘りして分析し、さらに競合分析などで多角的にパフォーマンス改善に取り組んでいくのがよさそうだ。

UXのさらなる向上、スマホサイトのパフォーマンス最適化や機会損失の抑止を検討するマーケターやWeb担当者は、パフォーマンス計測による分析と改善を検討してみてはいかがだろうか。

掲載元:ビジネス+IT
http://www.sbbit.jp/article/bitsp/30612

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